J.フロント建装は、大丸・松坂屋・パルコなどを運営するJ.フロント リテイリングのグループ会社です。

Project Story #2MUJI HOTEL GINZA

無印良品の世界旗艦店として、2019年4月にオープンした「無印良品 銀座」。その上層階には、中国・深圳、北京に続く3軒目、日本としては初の「MUJI HOTEL GINZA」が誕生した。当初はオフィスとして設計されていたフロアに客室を配置し、備品ひとつひとつにまで無印良品の世界観を徹底して表現するという難易度の高いプロジェクト。無印良品との綿密な調整を経て、短い工期でやりとげたJ.フロント建装の内装施工チームは、内外から高い評価を得た。

担当業務

プロジェクトメンバー

無印良品ブランドの名に恥じない品質管理を重視

2019年4月の「MUJI HOTEL GINZA」開業に向け、J.フロント建装への依頼が正式に決まってから引き渡しまでの時間が短かったにもかかわらず、本プロジェクトは顧客のイメージする内装施工を完成させた。幾度となく無印良品のデザイナーともやり取りをし、ブランドの世界観を忠実に表現するという難しさもある仕事だった。

営業1名、工務3名、資材調達1名、設計2名、現場管理4名からなる11名のプロジェクトチーム。メンバーを選定したのは現場所長を務めたリーダー・古川だ。

「工期の短さ、内容の難しさが伴う大きなプロジェクト。スペシャリストでなければ対応できない現場だと思ったので、厳選して社内各部門で優秀なメンバーに声をかけました。現場の近くに仮事務所を借り、そこを拠点にメンバー全員で集中して仕事に取り組みました」(古川)

最も気をつかったのは品質管理。日本初の「MUJI HOTEL」に、失敗は許されない。板目、フローリング、家具材を顧客の予算に合わせて選定する。その過程でも、工期が短いならではの苦労がついて回った。

「板材はすべて日本産です。中国から仕入れれば安く上がるのですが、搬送に時間がかかる。時間のない中で資材を仕入れなければならないので、例えば作り付けのデスクは天板の仕入れとジョイント部分の加工を違う場所で行い搬入しています。日本各地での制作となり出来上がるまでヒヤヒヤでした」(古川)

篠原が属する設計チームは、施工図の作図がメイン。平面図から展開して、現場が作業しやすいよう詳細図もまとめた。

「図面の量が多い物件だったので、混乱を招かないよう、1枚ずつ納まりのチェックをして丁寧な作業を心掛けました」(篠原)

厳しい条件にも、
チーム全員で知恵を寄せ合い立ち向かう

これまで数多くのホテル内装を手掛けてきたJ.フロント建装。それでも、本プロジェクトは当初オフィスビルとして設計されたフロアを客室にするという点で、難易度の高いものだった。間取りは通常のホテルの客室よりも細長い配置にせざるを得ない。その代わり、客室の入り口から天井は高く使える。この空間をどのように生かすか。さらに、ホテルの客室として静音性を高めるための工夫も、内装施工の腕の見せどころだった。

「搬入ルートの確保も工夫が必要でした。普通は壁を立てて一部屋ずつ区切ってから作業しますが、客室の通路が狭いので、部屋を区切ってしまうと必要な資材が搬入できないのです。必要な資材をすべて運んでから、最後に壁を作る方法を取りました」(古川)

仮事務所でも、現場でも、毎日のように社内ミーティングが重ねられた。1人の力ではどうにもならないことも、チーム10人の意見を聞けば最善が見つかる。それが古川のやり方だ。

「お昼休みの後半はいつもミーティングでしたが、チーム全員で真面目に、活発に意見を言い合いました」(篠原)

デザイナーの世界観を具体化することが使命

無印良品のブランドイメージを具現化するためにジョイントの間隔、サインの太さや配置など、細かい部分にも気を配り、細心の注意を払った。

「いちばんこだわったのは、室内のリモコン操作や電話機能を1台に収めたタブレット。この画面の文字サイズや配置も、何度も見本を見せて話し合いました」(古川)

顧客を納得させるために、部分的に見本を試作することも少なくない。

狭いタイプの客室では、バスルームと部屋を仕切る可動式扉が収納になっている。省スペースにパジャマや靴ベラといった備品も収納するため、設計には1mm単位での調整が必要だった。

「現場近くの仮事務所に常駐していたので、顧客の方とも距離が近く、夜まで打ち合わせをしたことも。静岡の工場まで一緒に行き、ベニヤ板でサンプルを作り、備品の収納力や扉全体の重さも実際に見てもらって確認しました」(篠原)

「読書灯も、サンプルを実際に作ると光度が弱いことがわかり、材質や角度調整などスペック変更を重ねました。何度サンプルを出したかわからないほど、こだわった部分です」(古川)

信頼できるメンバーだから、すべてを任せられた

この大きなプロジェクトに入社2年目で関わることになった篠原に、古川は「難題」を課した。

二段ベッドに壁面本棚が作りつけられたTYPE Gの客室。その区画の設計図作成から、現場監督までを任せることにしたのだ。設計担当者が現場に出向くことはあっても、現場の管理・指揮は、本来は工務担当の仕事だ。

「自分で作図し、工場と打ち合わせて作ってもらったものを、現場で指示して取り付ける。1から10までやることで、わかることもあります。大変な作業ですが、彼女ならひとりでやり抜けると信じて、任せました」(古川)

その期待に応え、やりきった篠原。最後は本の滑り止めになる支えの部品を一本一本、自らの手で取り付けた。

「図面上では合っていたはずなのに、組み立てて搬入したら『あれ?納まらない?』と焦ったことも。現場で職人さんに削ってもらって、納まりを調整しました。こうした現場での細かい指示出しを経験したことで、どんな図面を書けば現場で組み立てやすいのか、職人さんや工務担当とその場でどうやり取りをしていくのかなど、本当に勉強になりました」(篠原)

成し遂げた大仕事に対する誇りを胸に

半年で関わった作業員は8000人、ピーク時は1日100人以上の職人が出入りした「MUJI HOTEL GINZA」の内装施工チーム。作業中は内外から「絶対、終わらない」と言われ続けたというが、現場がきれいに片付いた総合検査の日の朝、「J.フロント建装はすごい」という称賛に変わった。

この半年間、古川が留意し続けたのは、チームの士気を上げること。

「仕事が思い通りいかず、悩んだときは、設計担当の上司をはじめ、現場のみなさんが力になってくれました。飲みに誘ってもらって、気持ちを切り替えられた日もあります」(篠原)

即戦力となるベテランだけでなく、フレッシュな人材も組み合わせた古川の采配には「この会社のメンバーはみんな優秀。経験を積めば、もっともっと力をつけていくはず」(古川)というマネージャーとしての親心があった。

二段ベッドの現場で確実に力を付けた篠原は「設計チームではなく、小さな規模でも1人で設計者として一つの物件をまとめてみたい」(篠原)と次なる目標を語る。

完成後、ホームページやニュース、建築専門誌で自分たちの作ったものが大々的に掲載されたことは、このプロジェクトに関わったメンバー全員の誇りになっている。

MUJI HOTEL GINZA

「アンチゴージャス、アンチチープ」をコンセプトに、ちょうど良い価格で良く眠れ、旅先において体と心を整える空間と、宿泊客と土地をつなげるサービスを提供。良品計画によるコンセプト提供と内装デザイン監修の下、国内外でまちづくりにつながる場を手がけるUDSが企画、内装設計、運営及び経営を行う「MUJI HOTEL GINZA」は、無印良品の思想を体現するホテルです。

Project Story#1

大丸心斎橋店本館

Project Story#3

オリエンタルホテル ユニバーサル・シティ

実績紹介一覧