Project Story #3オリエンタルホテル ユニバーサル・シティ
JRユニバーサルシティ駅から徒歩約1分、大阪の人気観光地へもアクセスのよい好立地にある「オリエンタルホテル ユニバーサル・シティ」は、“Charge from Nature”をテーマに2021年12月から順次リニューアルオープン。大自然を彷彿とさせる、やすらぎと寛ぎの空間に生まれ変わる。全330室の客室の改装を進めているのはJ.フロント建装。営業中のホテルの改修工事は、作業時間も限られ一筋縄ではいかないが、設計・施工管理・営業がワンチームとなり取り組んだ仕事ぶりは顧客から高い評価を得ている。
担当業務
- 設計
- 施工
- 家具製作
プロジェクトメンバー
-
栗須望
現場所長として、工事の準備(内容の打ち合わせ、発注)、現場全体の作業およびコスト管理を行う。
-
川本大智
着工直前に参画。協力会社との現場工程管理、品質・安全管理等の施工管理をメインで担当。
-
渡邉廉
設計担当。施主との打ち合わせ、及びFFE施工図の作図を行う。
設計から発注までわずか2カ月 メンバー総出で現場実測からスタート
「この規模の改修工事にしては準備期間が短く、短期決戦だった」とメンバーが口を揃える本プロジェクト。携わることになった社員たちが総出でまず行ったのが、現場の実測だった。
「立ち上げからのメンバーは営業の他、設計が5名、施工管理が3名。急遽決定した物件だったので、まずはしっかりと現場を見る必要があると考え、すぐに動けるメンバーを集めて営業中のホテルに向かい、実測から始めました」(栗須)
現場の実測は、資材調達や家具の納まりにも関わる重要な作業。これを適正に行うことで、その後の設計作業もスムーズになる。
「設計業務に充てられた期間は約2カ月。このプロジェクトの規模にしてはかなり短期間です。設計チーム5人で力を合わせ、作図、顧客との打ち合わせを分担して進めました。発注までの時間が少ない中での作図で、意匠決定を待っていては間に合わないと判断し、施工図を一気に描き進めることにしました」(渡邉)
通常は、デザイナーの意匠決定に基づき、設計が納まりを考慮して作図を進める。だが、時間との戦いである今回のプロジェクトでは、意匠が明確になっていない段階でも臨機応変に対応し、図面を描き進めるしかなかった。
「与えられた時間がどんなに短くても、絶対に質を落とすわけにはいきません。工期を確保するためには、設計期間を圧縮するしか手立てがない。意匠が未確定のところについては、施工図と同時進行で意匠提案資料を作成し、納まりや見え方も同時に確認してもらえるように工夫しました」(渡邉)
短期間で効率よく作図、発注が進められた背景には、こうした設計部の機転があった。
一人一人のアイデア、取り組み、
チームワークで工期を確保
J.フロント建装がホテルのリニューアル計画に参画した時点で、改装内容のベースは7割方決まっていたというが、その後の工程を考えると余裕はまったくなかった。着工までの限られた時間は、施工管理担当にとっても短いものだった。
「設計が中心となり細かい納まり、仕上品番などを決めると、その内容で見積・積算・コスト管理を進めます。同時に現場の動きを考え、工事スケジュールや現場の仮設計画を作成しました。時間がないことはわかっていたので、把握した情報は随時整理・共有し、チームとしての機動力を大切にしてきました。顧客や業者さんとの打ち合わせも多く、常に誰かと話してどうにか前に進めていく毎日でした」(栗須)
通常、この規模のプロジェクトでは着工までの準備期間は3カ月ほど必要。それを1カ月半に抑え、短縮により創出できた期間を工期に当てることができたのは、栗須を中心とした施工管理の努力が大きい。
「設計と施工管理が一緒に動くことで、意匠決定に関しても、顧客の承認がスムーズに進んだ」と渡邉は振り返る。
「照明器具ひとつにしても、顧客に現場で実物のサイズ感や色味を直接見てもらうと決定が早いんです。普通の物件ではモックアップルーム(実際の客室を再現したサンプルルーム)を作って確認してもらうやり方が主流ですが、今回は時間も予算もなかった。そこで、代わりになる原寸模型を、施工管理のメンバーが社内で作ってくれたんです」(渡邉)
客室前の廊下にあるブラケット照明は、原寸模型を製作し、照明器具の候補をメンバーが手持ちで照らすという渾身のプレゼンを実施。実際のイメージが沸きやすく、顧客、デザイナーの意匠決定を早めた。チームが一丸となって挑んだその様子は、顧客から高く評価されたという。
着工から2カ月で3フロア、その後も2カ月ごとに引き渡し
2021年10月、着工直前に施工管理メンバーとして参画した川本は、協力会社との現場工程管理、品質・安全管理や、職人さんの労働時間管理などを行っている。
「年末までの2カ月で3フロアを引き渡すまでが、いちばん工期が短く、大変でした。無事に引き渡せたときは達成感もありました」(川本)
全330の客室、16フロアに及ぶ改修工事は、現在(取材時)もなお続いている。工事中のフロアを除き、ホテルは営業中。そのため、現場で大きな音が発生する作業ができるのは、チェックアウトからチェックインまでの1日わずか4~5時間。限られた時間で何を優先するべきか判断して工程を組み、職人さんを誘導しなければならない。
「人気の施設なのでお客様の出入りが多く、工事中のフロアは閉鎖しているとはいえ、搬入口近辺にお客様がいないとは限りません。家具やベッドなど、大物の搬入は危険を伴うので、事故の発生を防ぐという点は最も気をつかいます」(栗須)
フロアごとに順次着工し、2週間ごとの引き渡しを繰り返しているが、その現場を仕切る川本が当初意識したのは、工程の流れを作ることだった。
「その後も同じ業者さんで進めていくことが決まっていたので、最初に流れを作りたかったんです。今(取材時)、10フロア目の工事を行っていますが、何かあると業者さん同士でコミュニケーションを取り合って進めてくれていることもあり、これまで遅れもなく、順調に引き渡すことができています」(川本)
「16フロア中8フロアを引き渡した1期工事では、数字の面でもいい成績を残すことができました。設計、施工管理、そして営業が一丸となってやってきたことが、結果につながったとうれしく思っています」(栗須)
数字という目に見えるかたちで結果を残せたことは、メンバーそれぞれのモチベーションに繋がっている。
ホテル物件ならでは、改修工事ならでは、の難しさを設計の力で解決
ホテルの客室内装工事では、同じ図面でいくつもの工事を行い、同じ家具を何百個も作ることもある。今回、ホテル物件を初めて担当した渡邉は、そこに難しさと新たな気づきがあったと話す。
「これまで担当してきた商業施設や店舗物件の家具は1点ものが多かったのですが、ホテルの家具は作る数が多い。つまり図面上の1個のミスが、何百個ものミスにつながります。図面チェックをシビアに、十二分に注意して行わなければなりません」(渡邉)
現場での作りやすさ・取り付けやすさにもこだわる必要がある。製作数が多いほど、無理のない納まりでなければ再現性を保つことができないからだ。
「既存の柱型に食い込む形で設置する什器の設計には、特にこだわりました。家具をL字に切り込んで設置する設計にしたものの、柱型の寸法の実測値は様々だったんです。だからといって家具の図面をそれぞれ変更することは、現場の混乱を招くので避けたい。少ない細工で、家具と柱型のすき間を最小限にできるような平均値をとり、図面を描きました」(渡邉)
柱型や壁、躯体も既存のものを踏襲しなければならない改修工事ならではの苦労だったが、ここでも最初の段階で行った実測が生きてきた。
「設計メンバーが緻密に考えてくれたから、スムーズに進みました。渡邉さんたちのおかげです」(栗須)
関係者のこだわりと職人の苦労が詰まった空間に
今回の改修で、「オリエンタルホテル ユニバーサル・シティ」の客室は全体的にシックなイメージの空間に生まれ変わった。工事はあと残り6フロア(取材当時)。設計の渡邉はすでに次の案件に移っているが、このチームでの経験は大きな力になっている。
「次は別のホテルのパブリックエリアの改修なので、客室とは違う視点が必要ですが、施工管理・営業との連携のとりかた、チームとしての進めかたは、『オリエンタルホテル ユニバーサル・シティ』で培った経験を生かせると思っています」(渡邉)
引き続きこの現場を管理する栗須と川本は、「フロアごとに、品質を含めアップグレードしていけたら」と意気込む。
「デザインしたのはもちろん私ではないのですが、仕上がった物件を見るたびに達成感・やりがいを感じます。部屋の一つ一つに、顧客であるホテル関係者をはじめ、デザイナーのこだわり、職人さんたちの細かな苦労が込められています」(栗須)
「ベッドボードの上にある花柄の壁紙は、職人さんが苦労したところです。その努力の甲斐あってきれいに仕上がっているので、ぜひ見てほしい」(川本)
設計も施工管理も営業も、関わった全員が総力を挙げて取り組んだこのプロジェクトに、大きな誇りを持っている。
オリエンタルホテル ユニバーサル・シティ
「Charge from Nature」をコンセプトに、2021年12月から順次リニューアルオープン。
ダイナミックで豊かな大地、森に静かにたたずむ大きな樹々を表現し、大自然を彷彿とさせる空間に生まれ変わりました。
全330室あるゲストルームは、アースカラーを基調としたモダンで居⼼地のいいインテリアと⿊のフレームをアクセントカラーにした落ち着いたデザインとなっており、
訪れた全ての人に、機能的で快適な滞在を提供しています。
物件情報
- 所在地
- 大阪府大阪市此花区島屋6丁目2-78